理外の理、マジックリアリズムのような:『今昔物語集』
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ラテンアメリカ文学が好きなので月に一冊くらいはそうした本を読みます。
新しい本にも手を伸ばしますが、コルタサルなどをぱらぱらと再読することが多いです。
世にラテンアメリカ文学の愛好者は多く、現実やネット上で頻繁に出会うのですが、意外と日本のマジックリアリズムの話題にはなりません。
たとえば伊井直行や中井紀夫など、とてもおもしろいのに著書の多くが絶版で残念におもいます。
とくに80年代以降に日本でも中南米的なマジックリアリズムを取り入れた作品が多く現れますが、それらのはるかはるか昔から現実のなかの非現実、非現実を織り込んだ現実を描く作品群は存在しています。
その最たるものがおそらく『今昔物語集』です。
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「良い夜を持っている」
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不思議な縁で、中学、高校、大学と教えることになった学生がひとりいます。
中高ではそれぞれ半年ばかり塾で担当し、大学では初年次の基礎演習で担当しました。
わたしのいる大学の同じ学部学科に入学し、さらに十クラスほどあるなかピンポイントでわたしのゼミに振り分けられるという、こんなことは実に稀です。
一年生の頃から発表やレポートを一所懸命に取り組み、その後も専門科目の講義を熱心に受けてくれたので、成績と関係のないところでは全力で贔屓し倒してきたのですが、その子もついに、この後期で卒業を迎えます。
大学院への進学も考えたようですがよきところに就職が決まったとの報せを受けました。
おめでたいので昨夜お祝いをしてきました。
中学生の頃から知っている子とふたりでお酒を飲むというのは不思議なものです。
ついつい長話をしてしまいました。またこんな夜がくるとよいなと、そうおもっています。
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流れで、わたしはももクロが好きになったんだよ、と告げたら、わたしも嵐さんが好きなんですよ、と返されました。
そこから嵐先輩を中心としたお話へと雪崩れ込みました。
あかりんの午後の紅茶のCMを推しておきました。
ももクロ カテゴリーの記事一覧 - 〈棄想天蓋〉:文芸とポップカルチャーを中心に
未来としての日本の起源:B・スターリング「江戸の花」(1986)
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かつて、SFはよく日本を舞台としました。
いまでもそうした作品はなきにしもあらずですが、サイバーパンクの時代であった80年代には日本こそが未来であるとして、あるいは未来とは日本であるとして、日本的なものや日本そのものを描くことが定番化しました。
(それらに先行するものとして、日本に住み、日本でSFの創作をはじめたイアン・ワトスン「銀座の恋の物語」などもあります。これを収めた『スロー・バード』はよい短篇集です。)
サイバーパンクの盟主であり日本を贔屓にしているブルース・スターリングにも日本を舞台とした「江戸の花」という作品があります。1986年に発表されてこのかた邦訳書には未収録でしたが、昨年刊行されたハヤカワ文庫の『SFマガジン700【海外篇】』に採られ、わたしはそれではじめて読みました。
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「羊をめぐる冒険」:ラムとビールと、玉井さんが
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年に一度の恒例となったももいろクローバーZの24時間USTREAM生放送が終りました。
作業のために中座をしたり仮眠をとったりとしたために完走は果たせませんでしたが、3/4程度は視聴することができました。観るだけでもすこしは疲れてしまうので、出る側、作る側はどれだけ大変なのだろうかと考えると三年も継続してくれていることに頭が下がります。
さて、わたし個人として昨年と大きく変わったことが一つあり、それはtwitterのTLを並行して同時に眺めたということです。いわゆる実況というものですが、はじめてリアルタイムで体験しました。
多様な生の声が発せられては流れていき、大変に興味深いものでした。
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