憂気世の絵葉書
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近代日本の勉強をする際に、世相や風俗の参考になるのは絵葉書です。
百貨店や博覧会、地下鉄駅などさまざまな新しいものが絵葉書として発売されました。日露戦争のあたりからは出征兵士に送る美人絵葉書も人気でした。
近世はもちろん浮世絵です。
たとえば国貞えがく「吉原遊郭娼家之図」です。
江戸中期の吉原では揚屋での豪遊が衰退して、遊女の置屋であった妓楼が遊興の場を兼ねることとなっていきました。そのような大衆化した吉原を描いた五枚つづきの大作です。
明治期の清親の「両国花火之図」です。
これをみると、打ち上げ花火というのは起源からそうであったように川のうえでみるべきものだとおもい知らされます。贅沢な遊びです。
宮澤賢治も浮世絵の蒐集家でしたが、主としてアメリカでの流行を受けて大正六年頃から日本でも浮世絵人気が再燃します。その流れのなかで新版画にも光が当たり、多数の美人画が描かれます。
竹久夢二の「黒船屋」です。
さて、〈憂気世絵〉と称して現代の美人画を描いた米倉斉加年が、わたしは好きです。
「花のスカーフをした女」と題されたこの絵を部屋に飾りたいと望みつつ、いまはスキャンした絵葉書を待ち受け画像にして眺めています。
角川文庫の夢野久作、とくに『ドグラ・マグラ』は永久にあの表紙のままであってほしいです。