〈棄想天蓋〉:文芸とポップカルチャーを中心に

トマトです。学位は品種(文学)です。無名でも有名でもないちょうどよい塩梅の文芸作品をとりあげて雑感を綴ることが多いです。レコードが好きです。

砂 三篇

 

 

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この風景がひと粒ひと粒の砂から成るのは嘘だと云う。

             手を傾けると砂が零れる。

        砂は掬えても砂漠は掬えないと云う。

 

 

   *

 

  並木道の匂いのする手套を編んでいた十二歳の夏。

           いっぽんの毛糸の可塑性は砂。

 

 

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    湖の水を汲んで足を浸しても鰭には戻らない。

   海を埋めるために砂漠を掬うことを夢にみる掌。

           新雪を踏んで小径を深く進む。

 

 

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