〈棄想天蓋〉:文芸とポップカルチャーを中心に

トマトです。学位は品種(文学)です。無名でも有名でもないちょうどよい塩梅の文芸作品をとりあげて雑感を綴ることが多いです。レコードが好きです。

「相対性理論」から連想されるもの

映画『幕が上がる』のキーワードの一つとして〈相対性理論〉を挙げることができます。

 

劇中では志賀廣太郎演じる現国教師が、「相対性理論」といえば最近ではバンドの名前、といった発言をするシーンがありました。

相対性理論」といえば「やくしまるえつこ」、「やくしまるえつこ」といえば『輪るピングドラム』、『輪るピングドラム』といえば「宮澤賢治」と一巡りさせることができますが、わたしはやくしまるえつこの唄う「恋するニワトリ」という歌が好きです。

 

閑話休題。さて、では。

 

 現代の日本で「相対性理論」という言葉からバンドを連想する人が少なからずいるように、大正時代の日本ではその言葉から男女交際を連想する人が少なからずいました。宮澤賢治の同時代のことです。

相対性理論」と「男女交際」がなぜ結びつくのか、現代人であるわたし達にはなかなか想像がつきませんが、その解は「相対」という言葉の歴史的な文脈にあります。

 

将軍吉宗の治世、「忠」の字を二つに分断したうえに上下を入れ替えるなどけしからん、との理由で「心中」という言葉の使用が禁止されました。心中という行為の脱ロマン化が図られ、「心中」が「相対死(あいたいじに)」と呼び換えられることとなります。

つまり「相対」を【そうたい】ではなく【あいたい】と読むとき、それは男女の関係を表すものとなるのです。

 

というわけで、大正11年=1922年にはアインシュタイン訪日による一大「相対性理論ブーム」が巻き起こったのですが(船で日本へと向かっているまさにそのときに、アインシュタインノーベル賞受賞が決定しました)、あまりに難解なその理論は学者にさえほとんど理解されてはおらず、大衆のなかには「相対」+「性」の理論なんて、なんていやらしいのだろうと勘違いする人も少なくはなかったようです。

 

相対性理論ブームについては『宮澤賢治イーハトヴ学事典』の編集委員もされている金子務先生の『アインシュタイン・ショック』(1981)が大変に詳しいです。

Amazon.co.jp: アインシュタイン・ショック〈1〉大正日本を揺がせた四十三日間 (岩波現代文庫): 金子 務: 本

 

ももクロの国立競技場大会からちょうど一年ですね。春のパイ祭り的なものは催されるのでしょうか。

 

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