〈棄想天蓋〉:文芸とポップカルチャーを中心に

トマトです。学位は品種(文学)です。無名でも有名でもないちょうどよい塩梅の文芸作品をとりあげて雑感を綴ることが多いです。レコードが好きです。

2016-01-01から1年間の記事一覧

続・平気で生きるということ

(承前) * 重病人の日記ながら全体としてはあまり悲壮感はありません。 どこか間が抜けていて、どうでもいいような日常的な話題も多く挿まれます。 このふしぎな暢気さが実に魅力的です。

平気で生きるということ:正岡子規『仰臥漫録』(1918)

* 作家の日記が好きで、ときおり読みたくなります。 宮澤賢治がその類を遺していないのが残念なのですが、近代作家の日記というと正岡子規の『仰臥漫録』と石川啄木の『ROMAZI NIKKI』が双璧ではないでしょうか。 わたしは前者がとくに好きで、何年かおきに…

ヴィヴィッドな世界

* 昨日の昼頃に論文を一つ脱稿し、送付しました。 指定された論題が「震災と文学」についてであったので宮澤賢治と文明について書きました。 その夜に熊本を中心とする大きな地震が起こり、いろいろなことを考えさせられます。

六号雑感

* 宮澤賢治の学会、研究会に入会すると機関誌や会報の他に種々のちらしの類が郵送されてきます。 多くは演劇やコンサートの案内なのですが、わたしの住んでいる地域で催されるものは少ないためさっと眺めてこういうものがあるのだなと確認するだけのことが…

砂 三篇

「3月9日」

* 高城さんのソロコンサート、さくさく夢楽咲喜共和国のLVにひっそりとお邪魔させていただきました。 れにちゃんは実にれにちゃんで、ほんとうに素敵なイベントでした。

ドキュメンタルな《僕ら》/フィクショナルな《私たち》

* 『AMARANTHUS』と『白金の夜明け』が発売され、DOME TREKも三分の一が終りました。 それらに合わせてTV番組への出演も久々に多く、録ったものをひたすらにリピートして観ています。 音楽番組では『あたしの音楽』での「マホロバケーション」、とくに《ニ…

憂気世の絵葉書

* 近代日本の勉強をする際に、世相や風俗の参考になるのは絵葉書です。 百貨店や博覧会、地下鉄駅などさまざまな新しいものが絵葉書として発売されました。日露戦争のあたりからは出征兵士に送る美人絵葉書も人気でした。 近世はもちろん浮世絵です。 たと…

Cry Baby Cry、オギャー!

* ももいろクローバーZの新しいアルバムがついに発売されます。 3rdと4th、モノノフであれば一日に二千回くらい目にしているかもしれないお馴染のタイトル、『AMARANTHUS』と『白金の夜明け』です。 それぞれのアルバムから「WE ARE BORN」と「マホロバケー…

米袋のプリマドンナ

* 講義の最終回のあたりに、映像資料を用いることがしばしばあります。 歴史や文化に関する講義では視覚的に確認することで理解が深まる場合が多いためです。画像もよいですが動画だとよりインパクトが強く、印象にも残りやすいようです。

北園克衛、聡明な水晶の脳髄またはフラスコの中の湖

* 意味によつてあまりにも混乱した詩は、すべての葉を失ふかはりに、無作法な雀らの群集する一本の木を思はせる。 * 文学に於て、書かれた部分は単に文学に過ぎない。書かれない部分のみが初めてポエジイと呼ばれる。フロオベルが詩人であったのは、フロオ…

竹中郁、リリカルなモダニスト

* 一つ前の記事のなかで『詩と詩論』に言及したところ懐かしさを覚え、久しぶりに何冊か開いてみようとおもい立ちました。 読み進むうちに線を引いた箇所などにあたり、かつて考えたであろうことを朧げに憶い出しました。

ことばで世界を凍らせるということ

* 年末年始に、すこしまとめて前衛俳句を読みました。 ふり返ると昨年は詩にあまり触れずに過ごしたということにおもい至ったためです。 ゆっくりと短詩について考えたくて俳句を選びました。