〈棄想天蓋〉:文芸とポップカルチャーを中心に

トマトです。学位は品種(文学)です。無名でも有名でもないちょうどよい塩梅の文芸作品をとりあげて雑感を綴ることが多いです。レコードが好きです。

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ロジカルであってもリリカルであるに違いない:円城塔『烏有此譚』(2009)

* hontoからのDMで円城塔の新しい短篇集が近刊であることを知りました。 さほど熱心な読者でないわたしは雑誌掲載の連載や読切を追っているわけではないため、未読の作品をまとめて読むことができるのはなかなかに愉しみです。 『シャッフル航法』の刊行ま…

すこしふしぎ:中井紀夫「見果てぬ風」(1987)

* おそらく一年ほど前から、書店で筒井康隆『旅のラゴス』を頻りと目にするように感じていました。 壁面でピックアップされていたり平積みにされていたり、なぜか目立つ場所に置かれていることが多く、ときにはポップまで付されており、何事であろうか、改…

このぼんやりと白いもの

* 宮澤賢治の童話「銀河鉄道の夜」は、ジョバンニとカムパネルラが天の川に沿って走る鉄道で二人旅をする物語です。 そしてそれは牛乳をめぐる物語でもあります。 その夜のジョバンニの旅は母のために牛乳を取りに行くことからはじまり、その胸に牛乳を抱く…