『幕が上がる』についての雑感
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先日のことです。
大学一年生の子とちょっとお話をしていたところ、おもいがけず高校演劇の経験者であったという情報がとび出してきました。
その前にもたしか演劇に関心があるというようなことを聞いた覚えがあったので、当然のように、さりげなく、実にさりげなく『幕が上がる』の話題をもちかけてみました。
すると即答されたのです、《わたし、映画に出てるんですよ》と。
ことばの意味の処理が追いつかず瞬間的にフリーズしてしまいました。
そしてすぐに、この子はいま大変なことを発したぞ、と理解しました。
どういうことか、小一時間ほど問いつめようかしらと前のめりになりましたが、聞くところによると彼女の高校が昨年度の全国大会で上位に入ったとのことで、ダイジェストで高校演劇が紹介されるあのシーンでスクリーンに映し出されていたのだそうです。
身近なところにもいるものなのですね。感激しました。
高校演劇の全国で入賞するなんて、そんなの『幕が上がる』を読んでしまったので尊敬せざるを得ません。一瞬だけ血迷ってその子の成績を全力で贔屓してあげたくなってしまいました(もちろんながら一瞬の気の迷いです。それはそれです)。
そしてさらに、映画をきっかけにももクロがちょっと好きになったと言ってくれたのが嬉しかったです。
作品自体を気に入ったそうで映画と舞台の円盤も買う予定でいてくれているとか。なんとかこの前期のうちにさりげなく洗脳もとい誘導して、わが軍に引き入れることができるとよいなあと考えています。素晴らしい「幕ノフ」の原石です。とてもよい子です。
いろいろな入口から新しいファンが増えてくれるのは喜ばしいことです。
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ついでなので『幕が上がる』つながりでもうすこし。
宮澤賢治は近代の作家のなかでも群を抜いて学会や研究会の類が多いのですが、そのなかで最大規模を誇るのが花巻を拠点とする宮沢賢治学会イーハトーブセンターです。
同学会は『宮沢賢治研究Annual』という機関誌を年刊しており、そこには前年に発行された賢治関連の文献(図書や論文、エッセイなど)が可能な限り詳細に目録化されています。
そしてその末尾には、附録として「小学校・中学校・高等学校国語教科書に掲載されている宮沢賢治の作品」が載せられています。
気になったので近年のものをぱらぱらめくってみたところ、「銀河鉄道の夜」も詩「告別」も、採用している教科書は一つもありませんでした。残念です。
主だった作品は、小学校では「やまなし」や「雪渡り」、中学校では「オツベルと象」や「注文の多い料理店」、高校では「なめとこ山の熊」や詩「永訣の朝」あたりでした。このセレクト、おそらく何十年とあまり変わっていないのではないでしょうか。
《クラムボンはかぷかぷわらったよ》 《グララアガア、グララアガア》 《あめゆじゅとてちてけんじゃ》、印象的なフレーズに懐かしさを覚える方は多いようです。
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ふつうのベッドのことを《一段ベッド》と呼ぶ高城さんにきゅんとします。
ふと零れ落ちたこの語には彼女が経てきた日常が凝縮されているようにおもわれます。
いよいよあしたがお誕生日ですね。
ところで高城家のベッドと言えば、玉井さんがお泊りしたときにベッドと棚の隙間に寝かせられた、というエピソードが好きです。
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